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NPO活動の促進に関する基本指針(平成12年8月)

 この指針は、「石川県NPO活動促進検討会議」の提言を受け、石川県が平成12年8月に策定したものである。

目次

第1章 指針策定の趣旨

  •  今日の成熟型社会においては、人々の多様な価値観を反映して、公共サービスに対するニーズはますます個別化、多様化しているが、一方では、自由な価値観に基づき社会に貢献したいと考える市民の増加をもたらしている。
  •  また、少子・高齢社会の急激な進展、環境問題の深刻化や厳しい財政事情など、我が国や本県を取り巻く社会・経済情勢の大きな変化の中にあって、行政や企業のみでは解決が難しい様々な社会的な課題が発生している。
  •  このような状況にあって、今後、市民の多様なニーズに応え、あるいは様々な要素が複雑に絡み合った複合的な社会的課題に対応していくためには、市民自らの手で社会的課題を発見し、解決しようとするNPO(Nonprofit Organization=民間非営利組織)の役割がますます重要になってくるものと考えられる。
  •  豊かで活力のある社会の構築に向けて、今後は、行政、企業とNPOが互いに協働しながら様々な社会的課題に対応していくことが大切であり、県内各地で、自主的かつ自律的に活動するNPOが少しでも多く育つことが望まれる。
  •  このような状況のもと、本県では、NPO活動の促進を重要な課題として位置づけ、本年4月に「NPO推進室」を設置し、いち早くその体制を整えたところである。
  •  また、県内のNPOの実態に則した支援等の施策が必要との判断から、平成11年度に実態調査を実施するとともに、学識経験者やNPO関係者等による「石川県NPO活動促進検討会議」を設置したところである。同会議においては、県の支援の在り方やその具体的方策等について検討が重ねられ、本年7月に報告書の形で提言がまとめられた。
  •  この指針は、石川県NPO活動促進検討会議の提言も踏まえ、NPO活動の促進に向けて、本県のNPOへの支援及び協働の在り方や方向性を示すとともに、支援施策や協働事業を総合的に推進することを目的に策定したものである。

第2章 NPOの意義と役割

  1. NPOの定義
     「NPO活動」については、「社会的な使命の達成を目的に、市民が連携し、自発的かつ非営利で行う社会的、公益的活動」としてとらえ、そうした活動を継続的に行っている民間の組織、団体を「NPO」と定義するものとする。
     従来より存在する「ボランティア団体」、「市民活動団体」、「NGO」などを指すものとするが、原則として公益法人のように制度化されている組織(ただし、「特定非営利活動法人」は除く。)は含まないものとする。また、政治・宗教活動を主目的とするものや特定の個人・団体の利益を目的とするものも除くものとする。
  2. NPOの特性
     NPOは、「自主性」、「個別性」、「迅速性」など種々の特性を持っており、行政の持つ公平性や企業の持つ利潤追求という社会的価値にとらわれず、社会的課題に対して、迅速で先駆的な取り組みができるとともに、それぞれの多様な価値観と人間性に基づく自由な意思により、個別的で柔軟な社会サービスの提供が可能である。また、こうした取り組みから社会への問題意識を持ち、行政や企業に対して市民の立場からチェックし、独自の提言を行うことができる。
     さらに、自己の能力や行動を生かし、社会的な意義を見出したい市民の自己実現の場や新たな価値観を表現する場ともなるものである。
     このようなことから、NPOは、行政、企業と並ぶ第3のセクターとして期待され、今後、これらがバランスよく機能していくことで、豊かで活力のある社会の構築が進むものと考えられる。
  3. NPOの役割
    • (1)新たな公共サービスの供給主体
       地域に密着し、様々な価値観に基づいて多様で迅速に行動できるNPOは、個別的で柔軟なサービスを提供することが可能であり、公平性や平等性を重視すべき行政では提供が難しい新たな公共サービスの供給主体として、その役割が期待される。
    • (2)自己実現や社会貢献の場の提供主体
       一人ひとりの経験や能力を生かし、新たな生きがいを求めてボランティア活動を行いたいとする人々が増えつつあり、NPOには、このようなニーズに応え、自己実現を図る機会を提供する主体として、また、社会貢献を行いたいとする意欲を社会的成果に結びつける場の提供主体としての役割が期待される。
    • (3)自己責任型社会を実現するための原動力
       少子・高齢社会の進展や環境問題の深刻化などにともない、新たな行政需要が増大し、その処理のために膨大な行政コストが必要になっている。このような状況から、市民の自助を基調とした市民主体の社会の実現が望まれるようになってきており、NPOには、このような社会の構築に向けた新たな流れを生み出す原動力としての役割が期待される。
    • (4)新たな地域社会づくりと分権型社会を促進する主体
       活動を通じて個人の自己実現と社会的課題の解決を同時に進めることを目指すNPOは、従来の地域社会におけるコミュニティーが弱体化しつつある中で、新たな地域社会づくりの主体として、また、地方分権が進む中で、地域の個性や主体性を発揮し、分権型社会の形成を促進する主体として期待される。

第3章 NPO活動の促進に関する支援の基本的な考え方

 県内のNPOは、小規模で組織・運営基盤が脆弱な団体が多く、現状では、自らが活動を発展させ、社会に働きかけていく力が全般的に弱い状況にあるとの指摘があり、その自立基盤を確立するための支援が求められている。NPO支援の社会的体制が確立していない現状においては、県の支援が必要と考えられるが、NPOがその特性を十分に発揮し、各々の役割を果たせるよう、県の支援は、次の事項に留意しつつ実施していくものとする。
 なお、多様な分野で活動するNPOは、県のあらゆる部局と関係があることから、部局横断的、総合的にNPO活動の促進を図るものとする。

  1. 自主性・自立性への配慮
     市民やNPOの自由な意思による参加・活動を尊重することが重要であり、結果として、NPOの県への依存を高めたり、活動に対する誘導や干渉にならないような内容、手法となるよう配慮するものとする。
  2. 間接性・側面性の確保
     NPOへの支援は、その活動内容にもよるが、原則的にはその活動環境の整備に主眼を置き、間接的、側面的に行うものとする。
  3. 可能性の尊重
     市民やNPOの活動が社会公益活動に発展する可能性を尊重し、支援の窓口はできるだけ幅広く開いておくよう努めるものとする。
  4. 柔軟かつ段階的な対応
     市民やNPOのそれぞれの参加や活動の段階に応じ、必要な支援を柔軟に展開することとし、形式的な公平性や一律性にとらわれない個別性や、支援を受ける側の選択の自由が保たれるよう配慮するものとする。また、「支援」から「協働」へとNPOの発展段階に応じた対応を行うものとする。
  5. 有限的な対応
     NPOの自助努力による成長により、はじめてNPO活動の持つ独自性や先駆性といった特性が発揮されるものである。個々のNPOに対する支援については、NPO自らの創意工夫や努力による萌芽、成長を促す呼び水としての役割を明確にするため、原則として、有限・有期的なものとする。
  6. 分野を超えたネットワークづくりの推進
     福祉、環境、国際交流など様々な分野のNPOが交流することにより、自らの活動を客観的に評価し、活動に広がりや深みをもたせることができる。このため、各々の分野を超えたネットワークづくりの推進を念頭に、具体的施策を進めていくものとする。
  7. 協働関係(パートナーシップ)の尊重
     行政とNPOは、互いにその特性を認識、尊重しながら、対等なパートナーとして協力・協調し、社会的課題に対応することが求められている。NPOを支援する場合には、よりよい協働関係を構築していくという視点を持ち、行政の価値観でNPOを指導、誘導することがないよう配慮するものとする。

第4章 NPO活動の促進に関する施策

 県内におけるNPOの活動の拡大・発展や組織の自立を図るため、次の組織・運営基盤の強化をはじめとする環境整備の推進に努めるものとする。

  1. 支援施策
     県内におけるNPOの活動の拡大・発展や組織の自立を図るため、次の組織・運営基盤の強化をはじめとする環境整備の推進に努めるものとする。
    • (1)人材の確保と育成
       NPO活動や組織運営の原動力となる人材を量的・質的に確保し、育成することは、本県におけるNPO活動の促進にとって最も重要な課題の一つである。若い人たちをはじめ広く市民のNPO活動への参加を促進するとともに、組織のリーダーとなりうる人材を育成することが重要である。
       このため、潜在的な活動参加希望者向けの講座や、NPOと市民・企業・行政が相互理解を深めるためのフォーラムの開催等により、NPO活動への参加の動機付けや、市民とNPOをつなぐ仕組みの整備を図るものとする。また、NPOマネジメント講座の開催等により、活動を担う者の知識や技術の向上を図るなどの支援に努めるものとする。
    • (2)活動場所の提供
       立ち上げ期の団体や小規模な団体がNPOとして発展していくためには、活動場所の確保が重要な課題であり、自由に活動できる場所が身近に確保されることが必要である。
       このため、公共施設における利用時間の延長、活動機材の提供、施設職員に対する研修会の開催や利用に関する情報の収集・提供などにより、利用しやすい公共施設の環境整備に努めるものとする。また、NPO相互の交流や情報の収集・提供などの支援ができる施設の整備を図るとともに、企業においてもNPOに対する活動場所の提供が促進されるよう働きかけに努めるものとする。
    • (3)自立した経済基盤の確立
       NPOが自立的かつ継続的に活動を展開するための経済基盤の強化が必要であり、NPOが安定的に活動資金を確保できるよう、資金源の多様化を促進することが重要である。
       このため、インターネットや情報誌による企業等の資金助成情報の提供、NPOと企業等とのコーディネートなどのシステムの整備や、資金確保のための講座の開催などの支援に努めるものとする。また、NPOの独自性が発揮でき、自立につながるような助成制度や融資制度について、検討を進めるものとする。
    • (4)情報を受発信する機会の拡充と能力の向上
       各々のNPOが情報の受発信を活発に行うことは、活動を発展させる有力な手段であり、その環境の整備が重要である。
       このため、NPO活動に関する情報誌の発行、活動事例集の作成、インターネットの活用の促進などにより、情報発信や収集の機会の一層の拡充を図るものとする。また、講習会を開催するなど、情報に関する能力の向上を促すための支援に努めるものとする。
    • (5)自ら活動を発展させる環境づくり
       NPOが他のNPOやそのサービスの対象となる個人や団体との交流を通じて、活動の内容を客観的に評価し、自助努力や相互の連携によりその活動を拡大・発展させていくことが大切である。
       このため、インターネットを利用した情報ネットワークの形成を図るとともに、情報交換会の開催等により交流の機会を提供するなど、自ら活動を発展させることができる環境づくりに努めるものとする。
    • (6)NPOへの理解の向上
       NPO活動への参加や支援についての社会的コンセンサスを形成するうえで、市民、企業、行政のNPOへの認識や理解を深めることが大切である。
       このため、NPOが自ら情報を公開することへの支援や、シンポジウム、フォーラムの開催などにより、NPOやその活動についての啓発に努めるものとする。また、行政職員等に対する意識啓発のための研修やNPO活動を体験する機会の充実などに努めるものとする。
  2. 協働(パートナーシップ)事業の推進
     NPOと行政や企業が互いに情報公開を促進し、協働事業を積極的に行っていくことは、NPOの発展にとって重要である。また、より的確で効率的な公共サービスを提供していくためにも、各々が役割に応じた協働事業を推進していくことが必要である。
     このため、次のとおり協働事業の推進に努めるものとする。
    • (1) 役割分担の明確化
       非営利・公益活動については、行政、企業、NPOの各々の役割を明確化し、整理することにより、NPOと共通する領域について、NPOへの事業委託など協働の推進に努めるものとする。
    • (2)相互認識・理解の促進
       協働事業を推進するためには、相互の特性を認識・理解し、尊重しあうとともに、目的意識を共有することが重要であり、行政、企業とNPOとの意見交換の場や機会を設け、情報交換や提供のシステムの整備に努めるものとする。
    • (3)協働の機会づくりと実践
       これからの分権型社会にあっては、県民のニーズの汲み上げが重要になってくると考えられ、今後必要に応じ、NPOとの協働ができるような仕組みや機会づくりの検討を進めるものとする。
       また、行政とNPOの協働については、実践の中で経験を積みながら目的意識の共有や相互理解を進めることが重要であり、NPOへの支援に関する事業をはじめ、様々な分野における協働事業の実践に努めるものとする。
  3. NPO支援センターの設置
     NPO支援の社会的体制が確立していない現状を踏まえ、NPOに対する支援施策を早期に全県的、総合的に進めるため、NPO支援センターを設置するものとする。なお、実施にあたっては次の事項に留意することとする。
    • (1)設置にあたっての留意点
       支援センターの設置にあたっては、市民やNPOの相互交流を促進するとともに、行政、企業、NPOがNPO活動に関して協働する場とすることを基本コンセプトとするものとする。
       支援センターの設置場所、機能、規模、事業内容等を決めるにあたっては、NPOや市民等が参加する「NPO支援センター基本計画策定会議(仮称)」を設置し、NPO等の意向を十分に汲み取るものとする。そのうえで、支援センターの機能や役割を整理し、ハードとソフトの両面で利用者のニーズにあったものを設置するよう努めるものとする。
    • (2)支援センターの機能
       支援センターは、基本的には、NPOに関する普及・啓発や地域、分野を超えた全県的、総合的なNPO支援拠点とするものとし、情報、交流、人材育成、インキュベート、広報・啓発、調査・研究などの拠点としての機能を持つものとする。
       また、地域や分野を超えて、様々なNPOや他の支援センター等のネットワーク化やコーディネートなどを行うものとする。
    • (3)支援センターの運営方法
       支援センターの運営にあたっては、県と市民、NPOが協働できるような仕組みによるものとし、市民やNPOのニーズに沿った事業展開が図られるよう配慮するものとする。